「太陽光発電の仕組みを知りたいけれど、今更聞けない」
「太陽光発電を導入するメリットやデメリットをわかりやすく教えて欲しい」
このようにお悩みで、太陽光発電の導入検討が進まないこともあるのではないでしょうか。
再生可能エネルギーを活用した発電設備の中で、太陽光発電は最も普及しています。太陽の光を電気に変える理屈は分かっても、実際に発電の仕組みを知る機会は少ないケースが一般的です。
本記事では、太陽光発電システム施工の工程管理に従事していた筆者が、太陽の光エネルギーから電気を生み出す仕組みを解説します。
メリットとデメリットを解消する方法も紹介していますので、ぜひ導入検討の参考にしてください。
太陽光発電とは?なぜ電気を作れるのか仕組みを解説
文字どおり太陽の光エネルギーを活用し、電気を作り出すのが太陽光発電の仕組みです。
以下では太陽光発電システムを構成する機器と、発電した電気が使えるようになるまでの流れを説明します。
発電に必要な機器
太陽光発電システムの機器構成は、産業用と住宅用でほぼ同じです。以下の表は、太陽光発電システムを構成する主な機器の一覧です。
機器 | 詳細 |
---|---|
太陽光パネル | ・太陽光を受けて電気を作る機器 |
架台 | ・太陽光パネルを設置するための部材 |
スクリュー杭 | ・架台を設置するための基礎 ・地面に太陽光パネルを設置するときのみ必要 |
接続箱 | ・発電した電気を集約する機器 ・パワーコンディショナーと一体型の機器もある |
パワーコンディショナー | ・発電した直流電流を交流電流に変換する機器 ・家電製品は交流の電気でなければ利用できない |
分電盤 | ・発電した電気をコンセントまで届けるための機器 |
電力量計 | ・電気の量を計る機器 ・買電用と売電用の2種類ある |
モニター | ・電力の発電量をグラフ等で確認できる |
発電設備の規模に応じて、太陽光パネルの枚数やパワーコンディショナーの台数が決まります。
太陽光パネル1枚当たりの出力や設備の規模によりますが、住宅用の場合15~20枚前後のパネルと1台のパワーコンディショナーが必要です。
太陽光発電の電気を使えるまでの流れ
太陽光パネルで発電し、実際に電気を使用できるまでの流れは以下のようになります。
- 太陽光パネルに太陽の光エネルギーがあたる
- 内蔵された太陽電池で電子が発生
- ケーブルをつたって電気が接続箱経由でパワーコンディショナーへ
- パワーコンディショナーで電気を直流から交流に変換
交流電流に変換された電気は、分電盤を経由して建物内のコンセントに分配されて、初めて自家消費できます。
太陽光発電がもたらすメリット4選
個人宅に太陽光発電を導入して得られるメリットは、以下の4つです。
- 電気代の削減に役立つ
- 発電するためのエネルギー枯渇の心配がない
- 環境保護になる
- 停電時に非常用電源になる
どのような点が利点になるか、1つずつ説明します。
電気代の削減に役立つ
太陽光発電を導入するメリットの1つは、電力の自家消費によって電気代を削減できる点です。
消費する電気の一部を自家発電で賄うことで電力の購入量が減り、月々請求される電気代が下がります。
以下表の前提条件下で発電した電気を全て自家消費すると仮定した場合、1年間で約139,000円の電気代を削減できます。
前提条件の項目 | 詳細 |
---|---|
年間発電量 | 3,960kWh |
月間発電量 | 330kWh |
電気料金プラン | ・東京電力のスタンダードS、10A ・基本料金:311.75円 ・120kWhまで:29.80円 ・121~300kWh:36.40円 ・301kWh以上:40.49円 |
実際には発電した分を全て自家消費することは難しいため、蓄電システムの併用などにより経済効果を高くする工夫が重要です。
環境保護になる
太陽光発電のメリットとして、環境保護への貢献もあげられます。私たちが日常生活で利用している電力の約7割は、火力発電によるものです。
しかし、電気を作り出す工程で化石燃料を燃やすため、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)を排出します。
一方で、地上に降り注ぐ光エネルギーが発電の原料になる太陽光発電は、CO2が発生しません。
環境問題に関心があり、家庭でもできる対策に取り組みたい方にとって太陽光発電の導入は大きなメリットです。
発電するためのエネルギーに枯渇の心配がない
太陽の光エネルギーを発電に利用しても、地球上から消える心配がない点も太陽光発電のメリットです。
火力発電は石油や石炭などを必要としますが、これらの化石燃料は資源が底をつくことが懸念されています。
将来的に太陽が消滅するとは考えにくく、光エネルギーが地球に届かなくなる可能性も限りなく低いと考えられます。
環境負荷を軽減する目的のほか、エネルギー資源の枯渇への打開策としても太陽光発電の普及促進は重要です。
停電時に非常用電源になる
災害大国である日本では、いつどこで大きな地震が発生してもおかしくなく、近年では台風や大雨などによる災害も起きています。
東日本大震災が発生してから、非常用電源の確保など災害への備えに関心が高まっている風潮です。
住宅用の太陽光発電で独立運転機能付きのパワコンを設置していれば、停電中も電気を使えます。
家中の電力を賄えるわけではありませんが、備えているのといないのとでは、安心感に違いがあります。
太陽光発電のデメリットと解決策
太陽光発電にはいくつものメリットがありますが、以下のように泣き処となる面も存在します。
- 導入コストが高額
- 発電量が一定ではない
- メンテナンスなどランニングコストがかかる
これらがデメリットになる理由と、解決方法を1つずつ見ていきましょう。
導入コストが高額
家庭向けで発電設備の規模が小さい太陽光発電システムでも、100万円単位と初期費用が高額です。
太陽光発電が普及し始めた2012年頃と比較すると、半分に満たない程度まで金額が下がっています。
しかしながら、太陽光発電は決して安い買い物ではありません。初期費用を抑えながら太陽光発電を導入する方法を2つ、紹介します。
解決策①:補助金の利用
太陽光発電の設置に利用できる補助金の活用で、初期費用の何割かは負担を減らせます。
例えば、神奈川県川崎市では2024年度に太陽光発電設備等設置費補助金が新たに創設される予定です。
脱炭素社会の実現に向けて、神奈川県以外の自治体や政府が太陽光発電の導入を補助金の給付で後押ししています。
補助金は年度初めに政府や自治体が公募を開始するため、常にアンテナを貼って申請が遅れないようにしましょう。
解決策②:0円ソーラーの活用
初期費用をかけずに太陽光発電を導入できる方法に、0円ソーラーがあります。0円ソーラーのおおまかな仕組みは、以下のとおりです。
- 事業者の費用負担で個人宅の屋根に太陽光発電を設置
- 住宅の所有者はリース料または消費した電気料金を事業者に支払い
- 事業者が電力会社に余剰売電
初期費用がネックになっている方に、0円ソーラーはお勧めの導入方法です。
発電量が一定ではない
太陽光発電は太陽の光エネルギーが地上に届くタイミングのみ、発電できます。このため天候によって発電量が少ない日があり、夜間も発電しません。
電気代が高く自家消費で節約したくても、発電できないときには電力の購入が必要になる点が太陽光発電の難点です。
解決策は蓄電システムとの併用
安定した発電量が得られない太陽光発電のデメリットは、蓄電システムのセット利用で解決できます。
蓄電池には電力を溜める機能があるため、消費しきれなかった電気を充電しておけます。
太陽光パネルが発電できないときでも、蓄電池があれば電力を自家消費でき、電気代の節約効果を高められるでしょう。
メンテナンスなどランニングコストがかかる
太陽光発電の導入後は、以下3つのランニングコストがかかります。
- メンテナンス費用:3~5年に1回の点検が推奨されている
- 保険料:不測の事態に備えて保険加入が推奨されている
- パワーコンディショナー交換:比較的寿命が短いため途中で交換が必要になる
住宅用太陽光発電では、1年で約5,800円/kWのランニングコストがかかると言われています。
発電量が多い状態を保つためにメンテナンスやパワーコンディショナー交換は、避けられません。
自然災害による被害など無償補償が適用されない故障の修繕に必要なため、保険加入も必須です。
解決策は事前のシミュレーション
ランニングコストがいくらかかるのか事前に把握し、シミュレーションに含めて収支計画をたてれば、想定外の支出をなくせます。
シミュレーションしてもしなくても、必要なランニングコストの金額は変わりません。
しかし、いつ何にいくらコストが発生するか知っていれば、計画的に資金を貯蓄できます。
予定にない出費をなくせる点が、事前のシミュレーションがランニングコストに対する解決策になる理由です。
太陽光発電の一般的な導入費用
太陽光発電システムを導入する際の初期費用は、設備費用と設置費用の2つに分かれます。
設備費用にはソーラーパネルやパワコンなど、太陽光発電システムを構成する機器が含まれます。
設置費用は架台の取付けや足場代、電気工事などを含む作業代です。
以下は、太陽光発電の初期費用平均の比較表です。
費用の項目 | 住宅用(10kW未満) | 産業用(10kW以上) |
---|---|---|
設備費用 | 14.5万円/kW | 21.1万円/kW |
設置費用 | 7.4万円/kW | 8.6万円/kW |
その他費用 (設計費・接続費など) | 6.5万円/kW | 1.7万円/kW |
合計 | 28.4万円/kW | 31.4万円/kW |
住宅用と産業用でシステム構成に必要な機器は変わりませんが、発電設備の規模により費用の平均額は、表のように異なります。
太陽光発電の導入における注意点
住宅用太陽光発電の導入を検討する際、注意したいポイントは以下の2つです。
- 設置場所の確保が必要
- 屋根設置では導入できない可能性がある
注意するべきポイントを具体的に説明しますので、自宅に当てはまる部分があるか、チェックする際の参考にしてください。
設置場所の確保が必要
太陽光発電を導入するには、自宅の屋根にパネルを設置するための広い面積が必要です。
メーカーや型式で異なりますが、ソーラーパネルの平均的なサイズは畳1枚分程度です。実際に設備容量3kWでパネルの出力が250Wの場合、必要枚数は12枚です。
3kWの太陽光発電システムを導入する際、最低でも20㎡程度の面積が必要と計算できます。
パネルの設置場所を確保できないと希望する量の電力が得られないため、屋根の面積は重要です。
屋根設置では導入できない可能性がある
建物の屋根に太陽光パネルを導入する場合、以下の項目が適切でないと設置が難しい可能性があります。
- 形状
- 強度
- 角度
- 向き
- 材質
1981年以前の旧耐震基準で建築確認された建物や形状が複雑な屋根では、太陽光パネルの設置が困難な場合があります。
専門家に相談し、太陽光パネル設置の可否を事前に確認しましょう。
太陽光発電が抱える課題は性能の向上
太陽光発電は地球温暖化の原因物質であるCO2を削減できる再生可能エネルギーとして注目されていますが、課題もあります。
発電効率や耐久性の向上が、太陽光発電においての課題です。
2022年時点における太陽光パネルの変換効率は、以下に示す表のようになっています。
太陽電池の種類 | 変換効率 |
---|---|
シリコン系 | 26.7% |
化合物系 | 37.9% |
有機系 | 17.4% |
太陽光パネルの主流はシリコン系ですが、化合物系の太陽電池よりも変換効率が低いのが現状です。
変換効率が上がれば、設備規模が小さくても多くの電力を得られるようになります。
小さい設備で発電量が多くなれば、初期費用の負担軽減につながり、太陽光発電導入のハードルを下げるためにも性能の向上は重要な課題です。
まとめ|太陽光発電は光エネルギーで発電する仕組み!メリットもデメリットもある
太陽光発電は、再生可能エネルギーである光エネルギーを活用して電気を生み出す仕組みの発電設備です。
自家消費によって電気代を削減できるほか、環境保護や非常時への備えになるなどのメリットがあります。
一方で、高額な初期費用やランニングコストがかかるといったデメリットもあるのが、太陽光発電の現状です。これらのデメリットは、導入前の適切な対策で解決できます。
デメリットが不安で太陽光発電の導入に踏み切れない方も、解決策を含めて検討を進めてみてはいかがでしょうか。
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